別府大学に設置されている文化財の調査機器
X線透過試験装置
主に出土金属製品の腐食状況の調査やサビの塊となってしまった遺物の本来の形状を把握する。また、象嵌など、材質の異なる金属の確認や組合せ、構造調査に用いる。従来のフィルムに当たる部分がデジタル化され(フラットパネル)、PC上で画像を確認、加工することができる。
蛍光X線分析装置
金属などの無機材料を使用した文化財の材質分析(定性分析)、定量分析(限定的)に利用する。非破壊で分析できることが最大の利点である。波長分散型とエネルギー分散型があり、エネルギー分散型のほうが、試料から発生するX線を効率よく受光できるため装置が小型化できる。据置き型のものと屋外に持ち出せる移動型がある。 試料にX線を照射すると、元素ごとに特徴のある波長のX線(特性X線)が発生する。これを検知管で捉えて図化(チャート図)する。チャートの高さは発生量に比例するため、簡易的な定量ができる。
X線回折分析装置
結晶質物質の分析に適している。岩石や顔料、金属などの分析ができる。含まれる元素を同定するのではなく、物質の存在を調べることができるため、顔料に含まれる鉱物組成や金属の錆(これらは結合しているものや結晶状態によって異なる物質となる)、石造物の劣化状態などを調べることができる。
デジタル実体顕微鏡
通称マイクロウォッチャーとも呼ばれ、検査する資料を拡大して観察することができる。PC上で画像を合成するため、通常の実体顕微鏡と違って、」高倍率に拡大してもピントの合う範囲が大きいのが利点である。三次元ソフトを利用すれば、簡易の立体画像を作成することができる。主に、ICチップなどの検査に利用されている。この他にモバイルデジタル顕微鏡が設置されている。
走査型電子顕微鏡
有機質や無機質資料のミクロ組織や構造観察に用いる。試料室に対象となる試料を設置し、電子線を照射し、試料から発生する二次電子、反射電子、特性X線をとらえて画像化(SEM)する。試料室が小さいため、本体から小片を採取するか、設置できる資料のみの分析に限られるのが難点である。X線検出器を組み込んだ装置では、元素の分布を図化でき、どこにどのような元素が存在するのかを調べることができる。
三次元レーダー計測装置
文化財の形状を立体的に測定する機器で、非接触で 測定することができ、計測値をPC上で立体画像化し、3Dプリンタを用いて複製を作製することができる。大学には、石垣や磨崖仏を計測する中距離型(3㎜ピッチ)、遺物を測定する近距離型(0.03㎜ピッチ)、古墳の石室などを計測するハンディ型(1㎜ピッチ)の3台が装備されている。遺跡や遺物は経年変化や災害などによりゆっくりと、あるいは急速に崩壊してしまう危険性が高い。立体的なデータを作成し保存することで、文化財が崩壊した場合でも復元が可能になる。また、3Dプリンタで作製した複製品は、活用のための有効な資料となる。