
本学学芸員課程では、本年度より博物館実習の一環として「展示ケース実習」を実施しています。本実習は、展示ケースを題材に、文化財の保存と展示、さらにはコストとの関係性について、実務的な視点から総合的に理解することを目的としています。
令和8年7月11日、株式会社乃村工藝社より小沢 一実 氏を講師にお招きし、実践的な講義と演習を行いました。
乃村工藝社は、商業施設や博物館・美術館、企業PR施設などの展示空間をはじめ、博覧会やイベントまで幅広く手掛ける空間の総合プロデュース企業です。構想から調査・企画、デザイン、施工、運営までを一貫して行っており、多くの展示空間づくりに携わっています。
講義では、まず「展示ケースとは何か」という問いを出発点に、収納・保存・設計といった観点から展示ケースの役割について学びました。また、文化財を「守る」「見せる」「操る」という展示ケースの3つの機能について解説いただき、展示ケースが文化財の保存と公開において重要な役割を担っていることを学びました。

その後のグループワークでは、文化財や展示条件、予算などの制約を踏まえながら、それぞれの条件に適した展示ケースの仕様を提案しました。学生たちはコストの上限を意識しながら、ガラス、照明、内装、環境制御、構造、免震機能などの要素を検討し、展示ケースの設計に取り組みました。

発表では、各グループの代表者が「何を優先したのか」「何を断念したのか」「どのようなリスクを許容したのか」といった視点から提案内容を説明し、実務に近い意思決定のプロセスを体験しました。
実習を通して学生たちは、文化財の保存と公開が一つの専門分野だけで完結するものではなく、多様な専門職の協働によって支えられていることを改めて認識しました。
今回の実習は、博物館を支えるさまざまな職種や業務について理解を深める貴重な機会となり、学芸員をはじめとする文化財・博物館関連分野への進路を考えるうえでも有意義な学びの場となりました。


